研究概要 |
1.先天性水頭症ラットHTX(HTX)の原因遺伝子の検索を目的に、2種類のDNAマイクロアレイ法(cDNA array, Gene Chip)を用いて、約12000種類の遺伝子を検索した。対照ラット(Wister rat, Sprague-Dawlel(SD) rat)に比べ十分の一以下の発現しか認めない約50の遺伝子をスクリーニングしたが、残念ながらHTXの原因遺伝子は未だ決定するに及んでいない。現在個々の遺伝子に対してRT-PCR法を行い、対照ラットのみに発現している遺伝子を同定中である。 2.短絡管の束縛より水頭症患者を解放せしめる事が、21世紀の水頭症治療の課題である。代償性水頭症では髄液循環のalternative pathwayが発達している。この代償機転を詳しく検討する事により、水頭症の新しい治療の糸口を見つけ出せるものと思われる。DNAマイクロアレイ法を用いて、代償性水頭症の脳において発現が増加している遺伝子をスクリーニングした。それらの遺伝子の中から、中枢神経系において水の移動に重要な働きをしている水チャンネルAquaporin4(AQ4)とC-type natriuretic peptide(CNP)に着目し、水頭症との関連において検討した。実験動物はHTXと対照としてSDラットを用いた。細胞実験では培養神経細胞と培養アストロサイトを用いた。蛋白の発現は特異抗体を用いた免疫組織染色法、Western blot法にて、RNAの発現はRT-PCR法にて検討した。AQ4は上衣細胞とアストロサイトの血管周囲の突起に局在していた。水頭症ではAQ4の発現は著明に増加していた。CNPは神経細胞にて産生され、アストロサイトに作用し、AQ4の発現を増加せしめた。水頭症におけるAQ4の発現増加は、髄液循環のalternative pathwayに関与している事が推察される。CNPはアストロサイトのAQ4の発現を増加せしめる事より、水頭症治療の候補蛋白と考えられる。
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