9Lラット脳腫瘍細胞にDNA修飾酵素であるO6メチルグアニンメチルトランスフェラーゼ(MGMT)をレトロウイルスベクターで導入した9L-MGMT細胞は、ACNUで代表されるニトロソウレア系抗癌剤に耐性であることが前年度に示された。この細胞では耐性に必要なMGMT酵素を必要かつ十分量発現していることがこれまでに確認されている。本年度はこの細胞を用いて、細胞内でMGMTのアンチセンスを過剰に発現させることによって再びニトロソウレア系抗癌剤に対して感受性を取り戻す事ができるかどうかについて検討した。アンチセンスを過剰発現させるためにまずレトロウイルスベクターpMV7-anti MGMTを作製、パッケージング細胞にトランスフェクションして組み換えウイルス体産生細胞を作製した。またMGMTのアンチセンスRNAを直接サイトメガロウイルスのプロモーターより転写することができる非ウイルスベクターpTracerCMV-anti MGMTも同時に作製した。それぞれを9L-MGMT細胞に導入して抗癌剤への感受性を細胞障害性試験により測定した。その結果いずれの方法でも腫瘍細胞の50%細胞増殖抑制濃度等に有意差は認められず、MGMTアンチセンスを導入することによる効果は期待されないことが判明した。現時点では今回の結果はアンチセンスの発現量の問題によるものか実験のデザイン自体の問題なのかが不明である。このため次年度はアンチセンスを高発現する組み換えアデノウイルスベクターを作製して引き続きRNAアンチセンスの効果を調べていく予定である。
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