研究概要 |
9Lラット脳腫瘍細胞にDNA修飾酵素であるO6メチルグアニンメチルトランスフェラーゼ(MGMT)をレトロウイルスベクターで導入した9L-MGMT細胞は、ACNUで代表されるニトロソウレア系抗癌剤に耐性であることが確認されており、本研究では、この細胞を用いて、細胞内でMGMTのアンチセンスやリボザイムを過剰に発現させることにより再びニトロソウレア系抗癌剤に対して感受性を取り戻す事ができるかどうかについて検討を行ってきた。前年度、アンチセンスを高発現する組み換えアデノウイルスベクターを作製してRNAアンチセンスの効果を細胞障害性試験により調べた。MGMTに対して-18/41部及び-4/650部に対応するアンチセンスを発現するアデノウイルスベクターを作製し、細胞に感染させたところ、ノーザンブロット法で9L-MGMT細胞でのMGMTの発現抑制を確認した。さらに細胞障害性試験でも有意差を持ってACNUへの感受性を与えることを確認した。本年度はより強力な治療法の確立を目指すべくMGMTmRNAの149-174の部位に結合して切断するリボザイムを発現するベクターを作製した。リボザイムを9L-MGMT細胞に感染させると、ノーザンブロット法で耐性遺伝子RNAの切断が確認された。さらに細胞内のMGMT量の減少や細胞障害性試験での感受性の上昇も認められた。実際のラットへの実験脳腫瘍の治療ではアンチセンス、リボザイム共に有意な生存日数の延長も認められた。これらの方法では耐性遺伝子の有効なRNAの翻訳は十分に阻害したが感受性の回復についてはin vitro, in vivo共に完全に満足できるものではなく耐性獲得以前の状態に細胞を戻すには新たなアプローチの必要性が示唆された。
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