前年度までの研究で、悪性神経膠腫では腫瘍細胞の浸潤に蛋白分解酵素であるuPAとgelatinase Aが関与しており、腫瘍細胞でのuPAの発現および腫瘍細胞に対するTNF-αの直接的抗腫瘍効果がNF-κB(p50およびp65)により調節されていることが明らかとなった。このため引き続きNF-κBの阻害剤(steroid、spirinおよびpentoxyfiline)とgelatinase阻害剤のBB-94およびTNF-αの併用で、抗腫瘍効果および腫瘍細胞の浸潤抑制効果が得られるかどうかを検討した。 1.NF-κBの活性化をpentoxyfilineで阻害することで、悪性神経膠腫のuPAの発現が抑制され、さらにgelatinase阻害剤のBB-94を併用することでmatrix metalloprotease(gelatinase Aおよびgelatinase B)の活性も抑制され、これらの相乗効果でin vitro invasion assayでは腫瘍細胞の浸潤が抑えられることが明らかとなった。 2.NF-κBはTNF-αにより誘導される悪性神経膠腫のapoptosisを阻害すること、NF-κB活性化の阻害剤としてpentoxyfilineをTNF-αと併用することで、悪性神経膠腫の浸潤能のみならず、腫瘍細胞の増殖能が抑制された。 3.また、LRPに特異的に結合するreceptor associated protein(RAP)と、point mutationを導入して細胞に結合、侵入できないが、タンパク合成阻害活性を有するrecombinantジフテリアトキシンとの化合物を作成し、uPAを発現し同時にLRPを発現している悪性神経膠腫細胞株のU251と、uPAは発現しているがLRPを発現していないU105細胞株を用いて、抗腫瘍効果および浸潤抑制効果を検討している。
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