研究概要 |
本研究では音響化学療法の臨床応用を目的とし、ラットC6グリオーマ細胞株とU105MGおよびU251MGの2種類のヒトグリオーマ細胞株の浮游液を用いて、Hematoporphyrin(Hp)誘導体であるPorfimer sodium(photofrin;Pf)を増感物質として、平行波超音波照射による音響化学療法の効果を照射前後のトリパンブルー色素排除試験による生細胞率で検討した。ラットC6グリオーマ細胞では、超音波強度および照射時間が増加するにつれて、超音波単独照射群、Pf併用群ともに生細胞率の低下がみられ、特に超音波強度0.3W/cm2において、また照射時間では15秒、30秒間照射において2群間に有意の差がみられた。Pfの効果については、単独照射群とPf併用群間には有意差はみられたが、添加したPf濃度(25,75,150μg/ml)間では、生細胞率の有意差はなかった。超音波照射による細胞形態の走査型電顕上の変化は、microvilliの脱落、bleb、gap形成であるが、U251Mg細胞は、単独照射群に比べ、Pf照射群で細胞破壊像が強く、U105MG細胞ではその変化の差は強くなかった。平行超音波を用いる音響化学療法のヒトグリオーマに対する臨床応用の可能性が示された。今後さらに音響化学療法耐性脳腫瘍の存在とその機序を明らかにするため、ヒトグリオーマ株化腫瘍細胞について2MR/LRPの発現の差、RAP(Receptor-associated protein)によるPfとの結合阻害が音響化学療法に及ぼす影響について検討する。
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