平成11年度は長期血液透析患者の脊椎病変の病理学的検討と、最適手術に関する術前・術後管理の注意点などについて研究を行った。 その成果は、国内の日本整形外科学会、日本脊椎外科学会、東日本臨床整形外科学会などで講演した。国際学会では、米国シアトル市で開催されたCervical Spine Research Societyで講演した。業績の内容は、特に脊柱構成要素へのアミロイド沈着様式を明らかにし、高度な不安定性惹起の原因を明確にした。また、破壊された脊柱の最適再建方法の確立に大きな成果をもたらした。 従来の研究では、アミロイドは椎間板にのみ沈着することが報告されていた。今回の研究では、椎間板、椎間関節を構成する靭帯にどのようにアミロイドが沈着し靭帯組織を破壊するか、その詳細が明確となった。また、椎間板へのアミロイド沈着から隣接椎体破壊の病理についても明らかとなった。 手術治療については、破壊性頚椎病変では、骨の脆弱性や椎体、椎間関節、外側塊がすでに破壊されている場合が多く脊椎内固定器具の設置が困難な場合が多い。しかしながら、椎弓根は比較的長期間維持されているため、北大整形外科が開発した椎弓根スクリューシステムを使用することによって骨癒合率が飛躍的に向上させることが可能となった。従来の報告では本疾患では骨癒合が完成しないという報告がほとんどであったが、当施設では80%を超える骨癒合率が獲得された。現在は、北海道地区の血液透析患者の疫学調査についても進行中である。
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