脊髄損傷後の急性期筋萎縮に対する高周波数刺激の機能的電気刺激への応用について検討した. 1.組織学的・組織化学的検討:脊髄損傷急性期に筋萎縮が優位に進行するタイプ2線維への影響を評価するため、約97%がタイプ2(速筋)線維で占められているTAとEDLにTESを行ったところ、100Hz群で、タイプ2Aと2B線維の有意な筋線維径の回復や増加を認めた。また、TAのみではあるがタイプ1線維は20Hz群、100Hz群ともにTESによるタイプ1線維の筋萎縮軽減効果が認められたが、周波数による有意差はなかった。脊髄損傷後の急性期に高周波数刺激を加えることにより筋萎縮しやすいタイブ2線維の萎縮を軽減し、さらにタイプ1線維に対する萎縮軽減効果も有する高周波数刺激は急性期筋萎縮に対して効果的であると考える。 2.筋収縮力:FESでは、特に抗重力筋である下肢の筋群を刺激して起立歩行動作を再建するので、TESによって十分な筋収縮力を獲得しておくことが重要である。今回の実験では、100Hz群のTAとEDLで筋収縮力が非刺激筋に比べて顕著に増加したが、20Hz群では増加率は少なかった。このことから、高周波数刺激は筋収縮力低下の防止により有用であると考える。 3.間欠的刺激下では低周波数刺激より高周波数刺激のほうが筋疲労が少ないことを明らかにした。これは従来の持続刺激下での実験結果と異なっている。低周波数疲労と高周波数疲労の発現のメカニズムの違いから、高周波数刺激の方が筋疲労の回復時間が短いため筋疲労抑制効果が大きいと考えられる。本実験から、間欠的刺激と高周波数刺激の2つの条件がそろったときに、脊髄損傷後の急性期筋萎縮防止に対して有用であると考える。
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