研究概要 |
【目的】自己の神経を機械的に伸長し,神経欠損間隙を埋めて神経縫合を行うことを目的とし,成熟ラットの坐骨神経を用いて,伸張後縫合神経の神経再生を組織学的に評価した. 【方法】成熟雄Wister系ラットを使用した.右大腿骨のみを展開し,大腿骨を中央部で切断した後,ラット用骨延長器を装着した.坐骨神経の伸張はラットの大腿骨延長により行い,伸張速度を1日3mm(3mm群)と5mm(5mm群)の2群とし,術翌日から伸長を開始し,15mmまで伸張した.伸張開始後7日目または14日目に大腿骨を元の長さに戻し,髄内釘にて固定した.次に坐骨神経を展開し,大腿中央部で切断後縫合した.縫合後2,4,6,8週目にラットの坐骨神経を採取した.各群各週とも3匹ずつとした.採取神経は膝部(D1:縫合部より遠位),下腿中央部(D2)の部分に分け,トルイジンブルー染色標本を作成し,組織学的観察を行った.また,組織定量的に検索した. 【結果】7日目縫合の組織所見では,両群とも軸索の再生をD1部では2週で認め,D2部では4週目で認めた.ミエリンデブリスは,各週とも3mm群に比し5mm群で多くみられたが,経過とともに減少した.5mm群では3mm群より神経管内に線維組織を多く認めた.再生軸索直径のヒストグラムでは,6週目のD1部では3mm群が4μmにピークがあったのに対し,5mm群では2μmにピークがあった.D2部の8週目では,3mm群が4μmにピークがあったのに対し5mm群では3μmにピークがあった.再生軸索の神経幹内面積比では,D1部D2部とも3mm群が5mm群より各週で大きな値を呈した.14日目縫合の両群は,7日目縫合の3mm群と同様の所見を示した. 【結論】7日目縫合では,1日3mm伸長群は5mm伸長群に比し,切断縫合後の神経再生速度と再生量が良好であった.縫合を14日目に遅延させると,5mm伸長群でも再生は良好となった.
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