研究概要 |
本研究で我々は、ヒト脊柱靭帯骨化の発生進展におけるNucleotide pyrophosphatase(Npps)およびレプチン・レプチン受容体の関与を、生化学的、細胞生物学的、分子生物学的および分子遺伝子学的な手法を用いて解析した。 ヒト脊柱靭帯骨化症例の女性のある一群では、血清レプチン濃度が非骨化症例に比して上昇していることが明らかになった。さらに、細胞生物学的な解析から、脊柱靭帯骨化症例、非骨化症例の培養脊柱靭帯細胞には、レプチン受容体のshort from, long formに特異的な遺伝子が発現していることが示された。さらに、レプチンとIGF-Iを同時添加することにより、脊柱靭帯細胞の増殖能が増加することが示され、このにより、レプチンが脊柱靭帯細胞に直接作用を有すること、さらに、高レプチン血症が脊柱靭帯骨化の発生に何らかの影響を与えている可能性が示された。 頸椎のみにOPLLを認めるC群と、胸椎または腰椎にOPLLが及ぶTL群を比較検討した。胸腰椎におよぶOPLLは頸椎に限局するOPLLに比べて女性に多かった。BMIは女性においてTL群がC群より有意に高値を示した。糖尿病合併は男においてTL群で合併率がより高かった。血清レプチン値は女性においてTL群がC群より有意に高値であった。以上より、胸腰椎におよぶOPLLは、男では耐糖能異常、女では肥満、高レプチン血症との関連性が強いことが明らかとなった。対象のgenomicDNAを用いてレプチン受容体遺伝子多型解析を行った。その結果、レプチン受容体遺伝子多型のアレル頻度はC,TL群間に有意差を認めなかった。 Npps遺伝子異常により脊柱靭帯骨化を発生するtwyマウスを解析した。twy脊柱靭帯骨化過程においてオステオポンチンが過剰発現していることが明らかとなり、脊柱靭帯骨化症の発生進展とオステオポンチンの関連が示唆された。
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