研究概要 |
脊椎悪性腫瘍に対する脊椎全摘術後の脊注再建では、インストルメントの固定性、移植骨量、移植骨のリモデリングから考え、再建部分を短縮することが有利であると考えられる。脊注短縮に伴う脊髄の生理的変化,および脊注短縮の安全性について実験的に検討した。 対象と方法:体重10-12kgの雑種成犬を用いた。第10〜第2腰椎をインストルメントを用い固定した後、第12胸椎を全摘し、20mmの短縮ができる実験モデルを作成した。 1)脊注短縮操作を漸増した際の硬膜管の形態的変化を観察した。また、硬膜管が形態変化を生じた各時点で、硬膜内に硬化剤を注入し、脊髄と硬膜の状態を観察した。(n=8) 2)短縮操作時の脊髄誘発電位を測定した。また麻酔覚醒後の後肢機能を評価した。(n=8) 3)第12胸椎中央部分の骨髄血流量を水素クリアランス法で測定した。(n=4) 結果: 1)7.5±1.7mmの短縮では、硬膜管の形態変化が生じなかった。短縮量が11.5±1.2mmまでは硬膜にひだが生じたが、脊髄の走行は変化しなかった。それ以上短縮すると硬膜、骨髄とも折れ曲がり、凹側で硬膜が脊髄を圧迫した。 2)硬膜が折れ曲がり脊髄を圧迫し始めた時点(平均11.5mm短縮)で骨髄誘発電位に異常が出現した。麻酔覚醒後の後肢機能では、硬膜が脊髄を圧迫する直前で固定した群(n=4)は、術後麻酔を生じなかった。屈曲変形後も更に短縮を行った群(n=4)は、術後後肢の不全麻酔を生じた。 3)骨髄血流量は短縮に伴い増加したが、硬膜が脊髄を圧迫し始めると骨髄血流量は減少し、脊注短縮を続けると骨髄血流量はさらに減少した。20mmの短縮を行い硬膜管が大きく屈曲した状態での骨髄血流量は短縮前の約90%であった。 考察:脊椎短縮による骨髄障害は、骨髄血流量の低下によるものではなく,硬膜による機械的な骨髄圧迫によるものと考えられた。
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