脊椎悪性腫瘍に対する脊椎全摘術後の脊柱再建では、インストルメントの固定性、移植骨量、移植骨のリモデリングから考え、再建部分を短縮することが有利であると考えられる。脊柱短縮が脊髄に与える影響について、成犬を用いて実験を行った。第13胸椎を全摘出し長軸方向に20mmの脊柱短縮が可能な実験モデルを作成した。短縮に伴い7.2±1.7mmの脊柱短縮(切除部分の64%)までは硬膜および脊髄は上下の脊柱管に滑走し、硬膜及び脊髄は形態的変化を生じなかった。7.2mm〜12.5±1.1mmの脊柱短縮では、硬膜にひだ状の変化が生じたが、脊髄の走行は直線状であった(n=4)。12.5mm以上の短縮では、脊髄のkinkingを生じ硬膜管は脊柱管から背側に突出した。水素クリアランス法を用いた脊髄血流量は5mm、10mm、15mm、20mmの脊柱短縮において、各々短縮前の146±10%、160±21%、102±17%、93±7%であり、5mm、10mmの脊柱短縮時の脊髄血流量が有意に増加していた(n=6)。脊髄誘発電位において、脊髄がkinkingを生じた時に振幅増大現象や電位の陽性化などの脊髄障害電位が記録された。麻酔覚醒後の後肢機能では硬膜が脊髄を圧迫する直前で固定した群(n=4)では術後麻痺を生じなかった。屈曲変形後も短縮を行った群(n=4)は術後不全麻痺を生じた。脊髄のkinkingが生じる時点までの脊柱短縮は、脊髄血流量を増加させ脊髄機能の回復に有効であると考えた。
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