研究概要 |
1)シスプラチン耐性骨肉腫におけるp53遺伝子の変異の解析 免疫染色法では、両細胞株(OST(シスプラチン感受性株),OST-R(シスプラチン耐性株))において全くp53蛋白の過剰発現を認めなかった。PCR-SSCP法では、p53遺伝子のExon5から8までに点突然変異を認めなかった。従って、両腫瘍細胞ともに野生型p53蛋白を発現していると考えられた。 2)シスプラチン耐性骨肉腫におけるp53遺伝子の欠失の解析 OST-Rにおいてp53遺伝子の新たな欠失が有意に増加していることを示した。p53遺伝子の欠失に呼応して野生型p53蛋白量も減少しており、シスプラチン耐性骨肉腫においてはp53遺伝子の機能的な役割が抑制され、17番染色体遺伝子の不安定性を増大していると推察した。従来報告されてきたp53遺伝子の点突然変異が認められなくても、その機能異常としてp53遺伝子およびp53蛋白の欠失が骨肉腫におけるシスプラチン獲得耐性の有用な指標となることが明らかとなった。 3)化学療法によるp53遺伝子発現の変化を解析およびp53発現制御による細胞増殖の抑制 カフェインはDNA修復を阻害し,p53の発現を抑制する.シスプラチンに高感受性のOST細胞ではシスプラチンの殺細胞効果がカフェインにより増強された。その際、p53蛋白はシスプラチン処理により増加しDNA合成能は抑制されたが、カフェイン添加によりp53蛋白は抑制されDNA合成能の抑制は解除された。シスプラチン耐性のOST/R細胞ではシスプラチンの殺細胞効果はカフェインにて増強されず、p53蛋白量とDNA合成能のいずれも変化がなかった。
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