研究概要 |
細胞老化過程における遺伝子発現変化と内軟骨性骨化における軟骨の肥大化に際した遺伝子発現の相同性より、この2者が同一の過程であるとの仮説について検討している。 まずラット椎間板より髄核および線維輪の細胞培養系を確立した。いずれの細胞も軟骨細胞様のphenotypeをもっており、II型コラーゲンおよびアグリカンの遺伝子発現がRT-PCRにより確認された。この線維輪細胞を分離・培養して継代を続け、クライシスに至るまでの細胞より、RNAを抽出しcDNAを作成した。細胞老化現象を観察するためにはヒト細胞が最適であるため、手術時に得たヒト椎間板細胞を分離・培養し、細胞老化に至らしめるため現在2継代ごとにRNA抽出及びcDNA作成を行いつつ継代を続けている。 一方で老化関連遺伝子である、p16^<INK4a>およびHic-5に注目し、各因子の内軟骨性骨化部位における発現を検討している。p16^<INK4a>はG1/S期移行を阻害する細胞周期制御因子で、細胞の不死化・癌化に関連していることが示されており、軟骨細胞の肥大化に伴う増殖能の低下に関連している可能性が考えられる。Hic-5はpaxillin関連の細胞接着因子で細胞形態の変化と増殖能の低下および細胞外基質関連蛋白の発現に関与している事が解っており、肥大軟骨細胞への分化つまり軟骨の最終分化における変化と多くの点で一致しているため、Hic-5がこれらの発現に深く関与している可能性が考えられる。正常マウス及び作成した実験的脊椎症モデルマウスの組織を用いて、p16^<INK4a>の免疫組織化学により、成長軟骨帯,骨折治癒過程の仮骨および骨棘形成部の肥大軟骨における蛋白レベルでの発現を確認した。なお現在in situ hybridization用のプローベを作成中であり、今後これらを用いてp16^<INK4a>及びHic-5の発現を確認していく予定である。
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