研究概要 |
1.SYT-SSX融合遺伝子の簡便な診断法法の確立を目指し、SYT-SSX蛋白に対する特異抗体を作製した。抗原として、SYT-SSX融合遺伝子のブレイクポイント部分を含む15ペプチドを用いた。ウサギに免疫後、新規に得られた抗血清を用い、ヒト滑膜肉腫組織に対し、蛍光抗体法、免疫組織化学染色を行った結果、約30%の症例で、腫瘍細胞の核が染色された。悪性線維性組織球腫5例、悪性神経鞘腫5例で、陽性所見を示す症例は認めなかった。本抗体は、今後の滑膜肉腫の病理診断に有用であることが示された。 2.滑膜肉腫に特異的なSYT-SSX融合遺伝子産物を標的とする腫瘍特異的ペプチド免疫療法の開発のため、CTL誘導能のより高い改変ペプチド(K9L,F9F,F9I,F9W)の合成に成功した。T2-A^*2402細胞と4種の改変ベプチドとの親和性は、従来のBベプチドと比較してそれぞれ3.2倍,3.5倍,11倍,2.8倍であった。BベプチドでCTLの誘導できなかった1例の滑膜肉腫患者の末梢血において、K9Iペプチドで刺激したT細胞がT2-A^*2402細胞を特異的に殺傷した。また、このT細胞は滑膜肉腫株Fujiを特異的に殺傷した。本ペプチドを用いた、腫瘍特異的免疫療法は、滑膜肉腫の補助的治療として臨床応用される可能性が示された。 3.CMVプロモーターを用いて、SYT-SSX2融合遺伝子を強制発現させたトランスジェニックマウスを作成し、滑膜肉腫の発生を観察したが、腫瘍発生を認めなかった。
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