研究概要 |
1.NIH3T3細胞で発現させたリコンビナントのSYT-SSX融合蛋白は、免疫沈降にて約60kDのバンドとして検出され、抗体の有用性が確かめられた。 2.ヒト滑膜肉腫においてSYT-SSX遺伝子が約60kDの産物に翻訳されていることがはじめて確認された。 3.type2のSYT-SSX遺伝子を発現するNIH3T3では細胞の形態や配列に変化が認められた。また軟寒天中でのコロニー形成はtype2でのみ認められ、in vitroにおけるtransforming活性はtype2の方が強かった。また各細胞を5×10^5個ずつヌードマウスの背部皮下に移植したところtype1,type2ともに移植後8週で明らかな腫瘍を形成し、in vivoにおける本遺伝子の造腫瘍性が明らかとなった。 4.アンチセンスオリゴの導入により線維肉腫の増殖は抑制されなかったが、滑膜肉腫細胞の増殖が有意に抑制された。 5.原発巣の腫瘍組織及び生検前の血液サンプルからnested PCRにより、滑膜肉腫に特異的な212bpの融合遺伝子産物を同定できた。本患者は、初診から2ヶ月後に多発性の肺転移を生じたが、アドリアマイシン、イフォスファミドによる化学療法が著効し、術後1年の現在、局所再発を認めず、肺転移は消失している。本患者の化学療法後の末梢血や対照の骨肉腫患者2名の末梢血からは、212bpのバンドは検出されなかった。
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