研究概要 |
われわれが考案した磁性体リポソームは,効果的な局所ターゲティングが可能であり,可移植性ハムスター骨肉腫に対し,著明な抗腫瘍効果があることを証明してきた.一方、われわれはこの磁性体リポソームを遺伝子治療のための遺伝子導入ベクターとして応用を検討している.現在,1)磁性体カチオニックリポソームの作製と2)in vitroにおける遺伝子導入を行っている。 1)Egg phosphatidylcholineとCholesterolにカチオン性物質Stearylamineを,モル比4:4:1で加えたリポソーム膜内包に,強磁性体である酸化鉄微粒子を逆相蒸発法により封入し,磁性体カチオニックリポソームを作製した。 2)遺伝子導入を確認するレポーター遺伝子として,βガラクトシダーゼ遺伝子を用いた。磁性体カチオニックリポソーム(正電荷)にβガラクトシダーゼ遺伝子(負電荷)を重量比1:1で混和し、電荷により結合したβガラクトシダーゼ遺伝子・磁性体カチオニックリポソーム複合体を作製した。これを培養ハムスター骨肉腫細胞に加え24時間培養後,ウエスタンブロット法でβガラクトシダーゼ蛋白の定量を試みたが,明らかな蛋白の発現はみられなかった。 今後,リポソーム成分等に改良を加え,遺伝子導入効率のよい磁性体カチオニックリポソームを作製する.ハムスター骨肉腫p53遺伝子をダイレクトシークエンスし,遺伝子変異を確認する.本システムを用いて,ハムスター骨肉腫に野生型p53遺伝子を導入し,抗腫瘍効果について検討する予定である。
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