研究概要 |
本研究では、遺伝子銃を用いて軟骨内にマーカー遺伝子を導入できるか否かを検討した。 まず人工膝関節置換術および人工股関節置換術の際に、関節軟骨を採取し、10x10mm大の軟骨片にした。あらかじめgaractosidase reporter geneを金粒子に固着し、これをHelios Gene Gunに装填し、100psi,200psi,300psi,400psiの4種類の圧で、1スライスに場所を変えて2カ所に打ち込んだ。打ち込み部を中心に活性測定用に軟骨片を1-2mm大にメスで細かくし、培養液3mlを入れた3.5mlシャーレに入れ、24〜48時間培養した。また、軟骨片に射入した2カ所のうちのもうひとつは組織診断用とした。 β-galactosicase活性は分光光度計を用いて計測した。その結果、射入後24時間のものよりは48時間の方が、やや活性が高い傾向にあったが、それでもコントロールと比べ有意差はなかった。圧の違いとの関係では200psiがもっとも活性が高かったが、有意差は無かった。組織学的検討では、HE染色で金粒子の存在がほとんど確認されず、金粒子が軟骨細胞内まで届いていないと考えられた。 今回の検討では軟骨組織への400psiまでの圧では、金粒子が軟骨組織内まで到達することができず、したがって遺伝子導入はできなかった。さらに射入時の圧力を大きくすることで軟骨組織内へ金粒子を射入させうる可能性はあるが、400psi以上の圧では組織障害を起こす可能性が高く、望ましくないと考える。したがって遺伝子銃を用いての軟骨内への遺伝子導入は、現時点では困難でであると考える。
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