馬尾に100mmHgの圧迫力を120分間加えた後、圧迫を解除した。ビデオシステムと連結したデジタルハイスコープを用いて、圧迫部位の頭尾側での血流を圧迫開始直前から圧迫解除後90分後まで経時的に観察した。観察部位は圧迫部位頭側先端から頭側10mmの部位と圧迫部位尾側先端から10mmの部位とした。圧迫直後から、血管の狭小化と明らかな血流低下が圧迫部位の頭尾側で認められた。血流が完全に停止する血管も存在した。これらの変化は、圧迫解除後にしだいに回復した。バルーン内にこんにゃくの原液を充填した後、ATS-1000air compression systemにより10mmHgの圧力を馬尾に加えた。こんにゃくの原液は10分から20分後に固形化するため、こんにゃくの原液をバルーンに注入した後、30分間放置した後、第7腰椎高位でバルーンの頭尾側を結紮切離した。この操作により第7腰椎高位で馬尾に10mmHgの慢性圧迫が加わることを確認した。1週間後に再手術を行い、圧迫部位の頭尾側における馬尾の血管をデジタルハイスコープを用いて観察した。血管の狭小化と血流低下が圧迫部位の頭尾側で認められた。また、新生血管が圧迫部位の頭尾側で認められた。 慢性馬尾圧迫モデルにおける代償性新生血管のハイブリダイゼーション法による定量化20頭の雑種成犬を検討の対象とした。バルーン内にこんにゃくの原液を注入し、ATS-1000air compression systemにより10mmHgの圧力を馬尾に加えた。こんにゃくが固形化した後に、バルーンの頭尾側を結紮切離し、第7腰椎高位で馬尾に10mmHgの圧迫が加わることを確認した。1週間後に再手術を行い、圧迫部位と圧迫部位の頭尾側における馬尾を採取し、馬尾の血管を組織学的に観察した。パラフィン固定後に、組織切片を作成し、ハイブリダイゼーション法により、angiopoetinとVEGFを新生血管のマーカーとし、定量化を行った。慢性圧迫後の組織学的観察では、明らかな新生血管は存在しなかった。angiopoetinとVEGFは、両者とも増加していなかった。すなわち、慢性圧迫1週間の時点では、明らかな新生血管は認められないと考えられる。
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