研究概要 |
昨年度までの研究において慢性関節リウマチ(RA)における炎症反応に重要な役割を果たすIL-1,IL-6、TNF-αなどのサイトカインのmRNA転写に関与する転写因子NF-κBがRAの疾患モデルであるマウスコラーゲン関節炎で発現亢進していることを認めた。今年度はNF-κBのアンチセンスオリゴヌクレオチドを作成しこれをマウスコラーゲン関節炎モデルに投与し関節炎の抑制が認められるか実験した。 ウシII型コラーゲンをFreund's incomplete adjuvantと混和してDBA/1Jマウスの尾根部に感作してコラーゲン関節炎を作成した。投与薬としてアンチセンス5'-GAAACAGATCGTCCATGGT,コントロールとしてミスマッチ5'-GAAACAGATCGTCTATGGTをデザインし、これらをマウス腹腔内に注射して四肢の関節炎を検討した。結果として関節炎の有意な抑制は認められなかった。この原因として1.アンチセンスが関節組織内に組み込まれなかった。すなわちオリゴヌクレオチドを運ぶ手段を見つける必要があること。2.炎症性サイトカインの他の転写因子としてAP-1がありNF-κBと双方を抑える必要があった。などの可能性が考えられ今後この2点に関し検討を加えることとした。また、NF-κB,TNF-αに関与したapoptosisの関節炎における影響も解析することとした。転写因子のマウス組織における発現に関し、マウス背部皮下にair-pouchを作成しlipopolysaccharide(LPS)投与により表層細胞層にAP-1の発現を確認した。したがってマウスでは炎症過程においてNF-κBおよびAP-1双方の発現を考慮する必要が考えられた。
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