研究概要 |
11年度においてはRAの疾患モデルであるコラーゲン関節炎をマウスに作成し、転写因子NF-κBの動態を解析した。ウシII型コラーゲンをFreund's incomplete adjuvantと混和してDBA/1Jマウスの尾根部に感作してコラーゲン関節炎を作成した。感作後3,5,7週後に各群5匹を屠殺し膝関節を採取し抗NF-κB抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。感作後7週で全例に四肢の関節炎が発症した。滑膜表層細胞、軟骨細胞においてNF-κBの発現が認められた。軟骨細胞における陽性率は感作後3,5,7週でそれぞれ43.7%,68.0%,79.5%であり無処置群では51.1%であった。 12年度はNF-κBのアンチセンスオリゴヌクレオチドを作成しこれをマウスコラーゲン関節炎モデルに投与し関節炎の抑制が認められるか実験した。投与薬としてアンチセンス5'-GAAACAGATCGTCCATGGT,コントロールとしてミスマッチ5'-GAAACAGATCGTCTATGGTをデザインし、これらをマウス腹腔内に注射して四肢の関節炎を検討した。結果として関節炎の有意な抑制は認められなかった。この原因として1.アンチセンスが関節組織内に組み込まれなかった。すなわちオリゴヌクレオチドを運ぶ手段を見つける必要があること。2.炎症性サイトカインの他の転写因子としてAP-1がありNF-κBと双方を抑える必要があった。などの可能性が考えられ今後この2点に関し検討を加えることとした。また、NF-κB,TNF-αに関与したapoptosisの関節炎における影響も解析することとした。転写因子のマウス組織における発現に関し、マウス背部皮下にair-pouchを作成しlipopolysaccharide投与により表層細胞層にAP-1の発現を確認した。したがってマウスでは炎症過程においてNF-κBおよびAP-1双方の発現を考慮する必要が考えられた。
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