研究概要 |
静脈皮弁生着の機序の解明のために、移植母床からの血行が再開されるまでの期間(phase of plasmtic imbibition)におけるplasmatic imbibitionの役割について検討をおこなった。まず臨床的にも確実に生着する血行を持たない全層植皮(skin graft)が、plasmatic imbibitionによる栄養のみで、正常の血行を有する動静脈皮弁同様栄養されうるかについて検討した。結果全層植皮片内の細胞はplasmatic imbibitionのみによって細胞分裂可能な程度に栄養されていることが、BrdUの取り込みおよび拡散を確かめることによって証明された。次に臨床的にも生着の期待できない血行を含まない筋皮弁(MC graft)をラット背側に2x3cmを4皮弁作成し,BrdUの取り込みおよび拡散について検討した。結果,MC graftは移植後1日目において、BrdUの取り込みおよび拡散について全層植皮と差を認めなかった。しかし、移植後1日目以降より、MC graft内の表皮におけるBrdUの取り込みは著しく減少したが、MC graft内へのBrdUの拡散は全層に認められた。移植後1週間での生着範囲は、移植後3日目におけるBrdUの取り込みの認められた範囲に一致していた。このことは、BrdUの拡散に見られたようにMC graftにおいてもskin graft同様plasmatic imbibitionが認められたにもかかわらず、plasmaの浸透だけではMC graftの組織の栄養は不十分で、結果として生着できないことを意味している。また、植皮片は移植後約3日目において新生血管によって移植母床との血行が再開されてくるが、血行が再開された時点ではすでに生着範囲は決定されていることが考察できる。これらの基礎実験を踏まえ、来年度は、通常では壊死してしまうMC graftに静脈を付加することによって、血行が再開されるまでの3日間、栄養されうる範囲が拡大することを同手法を用いて検討していく予定である。
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