本研究では、膜状に比べ、より操作し易いゼリー状の架橋ヒアルロン酸(HA)ゲルを使用し、外傷や手術後に発生する関節内癒着の防止効果について検討した。架橋ヒアルロン酸ゲルは、高純度のヒアルロン酸ナトリウムにケイ皮酸架橋基を導入した後に紫外線を照射し、ケイ皮酸架橋基同士を部分的に架橋させて調整した水和ゲルである。 家兎の膝関節を切開し、大腿骨顆部に5×10mmの軟骨下骨にいたる骨軟骨欠損部を作製する。術後は膝関節を3週間固定して、関節内癒着モデルを作製し、手術操作後に、膝関節内にヒアルロン酸ゲルを塗布し、術後3週での癒着防止効果を力学的、ならびに組織学的に検索した。左の結果、架橋HAゲルを手術時に関節内に投与すると、術後、関節滑膜と連続する肉芽組織の発生が有意に防止され、関節内の癒着は明らかに抑制されることが判明した。また、術後3週間の固定を除去した直後の膝関節の可動域は、架橋HAゲル群では癒着群より良好で対照群と同等であることから、関節内の癒着による可動域の減少は防止されるものと考える。 以上のことから、ゼリー状に作製した架橋ヒアルロン酸ゲルは、手術後の関節内の癒着発生を抑制することから、本材は今後の関節手術に臨床応用可能と考える。
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