研究概要 |
RAの病態モデルであるラットコラーゲン関節炎(CIA)にAP-1ヌクレオチドを投与することによりc-fos遺伝子の作用部位である競合的阻害を試み、これが関節の骨・軟骨破壊を抑制し得るものであるか否かについて検討した。 対照群のラット(Control oligo)では、感作後7日目にIgM型、次いで10日目にはIgG型の抗ウシならびに抗ラットII型コラーゲン抗体価が上昇した。感作後2週には関節炎が発症し、その後経時的にpaw volumeの増加が観察された。これに対して、AP-1オリゴ投与群のうち5μg投与群では、対照群との間に有意の差は認められなかったが、25,100μg投与群では関節炎の発症は抑制された。抗II型コラーゲン抗体産生においては、IgG型の抗ウシII型コラーゲン抗体価には明らかな変化は認めないものの、抗ラットII型コラーゲン抗体価は対照群に比べ低値を示した。また、対照群のラットの感作後4週の膝・足・手関節には、滑膜の増生とバンヌス様組織による著しい関節破壊像が観察されたのに対してAP-1オリゴ25,100μg投与群では、滑膜に細胞浸潤を伴った軽度の炎症所見を認めるものの、関節軟骨ならびに軟骨下骨の破壊はわずかで関節の構築が保たれていた。さらに、対照群のラットでは、感作後5日目より脛骨骨髄内のTRAP陽性細胞数が増加し、関節炎が発症する感作後1-2週には最多となり、その後徐々に減少する傾向を認めた。これに対して、AP-1オリゴ25,100μg投与群では、脛骨骨髄内のTRAP陽性細胞の増加ならびにTRAP活性は抑制されていた。 このことから、CIAにAP-1ヌクレオチドを投与すると、関節炎の発症ならびに関節破壊が抑制される事実が観察された。このことから、AP-1ヌクレオチドによるc-fos遺伝子の作用部位での競合的阻害は、TRAP陽性細胞の軟骨下骨髄への集族、抗II型コラーゲン抗体産生の抑制などのメカニズムを介してRAにおける骨・軟骨破壊を抑制する可能性があることが示唆された。
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