研究概要 |
本年度は、これまでの結果のまとめとシグナル伝達機構について詳細に検討した。 まず、骨化異常マウスであるop/opマウスには、T細胞およびB細胞の機能異常が認められた。これはT細胞刺激因子であるanti-CD3 antibodyによる刺激、およびB細胞刺激因子であるLPSによる反応性で検討した。これらはコントロールマウスの反応性に比べてその増殖能に低下が認められた。これらの結果から、まずこれを左右する各種シグナル伝達物質に注目した。シグナル分子としては、T細胞増殖に関連するFyn, Zap-70,Lckを、B細胞はCD19に注目してこれらシグナル分子のリン酸化を検討した。まず、マウスspleen細胞からT細胞とB細胞を精製分離し、これらをそれぞれanti-CD3 anti-bodyまたはLPSで0〜5分間刺激、それを回収してNP-40を用いてlysateにした。これを4℃、30分間超遠心(40,000rpm)してその上清を採取、これをfyn, zap-70またはCD19にて免疫沈降してこれらの分子を分離精製した。これをさらに10%均一ゲルにて電気泳動し、ウエスタンブロッティングしてanti-fyn, anti-zap-70またはanti-CD19anti-body、さらにanti-pTyr antibodyにてdetectionした。その結果、各種刺激でそれぞれのシグナル分子の量そのものは変化がなかったが、リン酸化はop/opマウスで低下している傾向にあった。これは5回の実験ですべて同じ傾向を示し、明らかに骨化異常マウスでこれらの分子のリン酸化に異常が認められた。強直性脊椎炎の場合、このような異常から骨に異変を生じるようになり、さらにそのリンパ球の周りの組織から産生される各種刺激因子(TGF-β、BGPなど)にも異常を生じてこれらの疾患が進行していくと考えている。 従ってこれらの結果からまずこのような疾患の場合には、基本的な免疫能を増強させる必要があり、その上でさらなる治療を重ねる必要があると考えられた。
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