研究概要 |
本研究では骨化異常マウス(op/op mouse)と正常マウスを用いてその免疫能の違いを検討し、またその違いを導くと考えられる各種シグナル分子の相違を検討した。その結果、まずop/opマウスではT細胞およびB細胞機能がそれぞれ低下しており、さらに免疫時の高原提示能も低下していた。また、これに関するシグナル分子、(Fyn, Zap-70,CD19)のチロシンリン酸化も低下していた。従って、骨化異常を起こすマウスでは基本的な免疫能に異常があることが明らかになった。この結果は、これまでの報告で本疾患がHLA-B27の独特な陽性率を示すものの、逆に陽性であるうちの数%しか発症しないという疑問の一部を解明できるものと考えた。一方、骨化に異常を来すOPLL患者末梢血を用いた免疫学的検討では、本患者末梢リンパ球にその機能低下が認められた。この患者血清中の各種サイトカイン産生能を検討したところ、TGF-β,b-FGF産生能に低下傾向が認められた。この低下の原因には、本大学整形外科学教室との共同研究で明らかになっているように、エストロゲンレセプターの異常が考えられた。そこでエストロゲン添加、未添加でその影響を検討したところ、サイトカイン産生に対する直接作用は認められなかった。しかし、IL-2添加で免疫能回復が観察された。これらの結果から、まず免疫能低下が骨化と密接な関係があること、およびこれによりシグナル伝達が障害されることから骨化や脊椎の強直などが誘発されていくと考えられた。以上より、患者の免疫能を回復させることが本疾患治療につながると考えられた。
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