研究概要 |
われわれは,変形性関節症の病態におけるT細胞性免疫の関与について検討してきた.当初の計画では,関節滑膜に浸潤している個々の細胞についてサイトカイン産生,T細胞受容体(TCR)Vβ鎖 CDR3 領域の解析を行なう予定であったが,変形性関節症滑膜に浸潤するリンパ球の数が極めて少なく,慢性関節リウマチで行なわれたようなsingle cell レベルでの解析は困難であった.そこで,滑膜浸潤細胞をbulkで解析を行なった.変形性関節症関節滑膜の免疫組織染色を行なったところ,CD4,8,20,25,68陽性細胞のほか,Th1/Th2phenotypeであるIL-4,IFNγ陽性細胞も認めた.続いて,TCRのVβ鎖CDR3領域の解析を行った.SSCPでは,変形性関節症滑膜由来のTCRでは,いくつかのバンドがみられ,浸潤T細胞には偏りがあることが判明し,CDR3領域の構造を解析してみると共通のアミノ酸配列をもつ,または共通のモチーフをもつT細胞がみいだされた.このことから,変形性関節症では何らかのT細胞性免疫を介した免疫応答が行なわれていることが示唆された. 次にこの免疫応答を抗原側から検討を行なった.これまで,軟骨基質であるコラーゲン,アグリカンに抗原性のあることが示されていたが,われわれは軟骨細胞より分泌される蛋白であるgp-39,YKL-39に注目し,ヒト変形性関節症患者の血清中濃度抗体価を調べたところ,約10%の患者に高値がみられ,リンパ球の反応も高かった.さらに,マウスにこれら蛋白を免疫してみたところ,単関節性の関節炎を煮起することができた.
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