研究概要 |
細胞内情報伝達に関連した骨肉腫治療の基礎的研究を目的として実験を行った。 セレニウムはある種の悪性腫瘍細胞の発育に対し抑制的に働くことが知られている。しかし現在までのところ、セレニウムが骨肉腫細胞にその効果を発揮するのかどうか、またそのメカニズムに付いてはほとんど知られていない。我々は3種類の骨肉腫細胞株を用い、セレニウムが骨肉腫細胞の発育に対して抑制効果を持つこと、さらにその作用発現に際して、どのような細胞内情報伝達分子が働くのかを明らかにした。 MG-63,U2OS,SaOSの3種類の骨肉腫細胞にセレニウムを暴露し、細胞増殖を観察したところ細胞増殖の抑制効果が認められた。また、多くの細胞が細胞死を起こしていることが認められ、その細胞死がアポトーシスによるものであることが証明された。さらに、用いた細胞株をヌードマウスに移植し、セレニウムを含む餌を与えたところ実際の生体内においても腫瘍の増大が抑制されていることを確認した。次に、アポトーシスを惹起するメカニズムを解明するためにp53,bcl-2,bax,Fasの発現を調べた。p53,bcl-2,baxの発現ははRT-PCR法を用い、Fasの発現はFaxscanを用いて調べたが、いずれの分子も明らかな有意差を認めなかった。従ってセレニウムがアポトーシスを誘導する機序は、一般に知られているこれらの分子を介さずに起こっていることが分かった。今後はこのアポトーシス誘導の機序を解明する方向で研究を続ける予定である。
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