研究概要 |
近年、癌抑制遺伝子の一つであるp21が細胞の分化に関与することが明らかとなってきている。今回、軟骨肉腫のp21発現とIGF-1による分化誘導におけるp21発現の変化について検討し、軟骨肉腫の分化におけるp21の働きにつき推察した。 軟骨肉腫14例の組織切片上でのp21の発現は、分化の比較的良いgrade1の6例中4例にその発現を認め、特にlacunaeを形成する分化の良い細胞に発現を認めた。逆に分化の低いgrade2,3の症例では8例全例にp21の発現は認められなかった。次に培養軟骨肉腫細胞であるSW-1353にIGF-1を各種濃度で添加すると、100ng/mlにて分化の指標となるsulfateの取り込みが増強された。同様に基質の破壊に関与するmatrix metalloproteinase-1,-3の産生量も増強された。またIGF-1添加による細胞のp21の発現をmRNA、蛋白レベルで確認すると、その発現量が濃度依存性に増強されることが確認された。 IGF-1が細胞の分化を促進するメカニズムの詳細は明らかではないが、この作用にp21が関与していることが示唆された。このように軟骨肉腫の分化にp21の発現が影響を与えていることが推察され、軟骨肉腫の未分化な細胞にp21を強制発現させることにより、腫瘍の分化を促進し腫瘍の悪性度を低下させる可能性も考えられた。 今後はin vivoにおいて実際にp21を強制発現させた軟骨肉腫が分化を示すか検討していく予定である。
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