研究概要 |
1.生体力学的解析 同種靭帯移植のモデルとして我々が用いてすでに発表してきたラット膝蓋腱移植モデル(1993 J OrthR,1996 Arch Orthop Trauma Surg,1997 J Orthop Res)を用いて,放射線滅菌を行った同種腱を移植し,生体力学的強度を計測した.比較対象に行った新鮮凍結同種腱を移植したものと比較し,移植後4週では放射線滅菌群では生体力学的強度が低下したが,その後24週まで両群とも強度は回復し,群間に有意差を認めなかった.以前の我々のコラーゲンのターンオーバーを生化学的に計測した研究結果と合わせて以下の結論にいたった.つまり,放射線滅菌を行った同種腱移植を用いた靭帯再建では,術後に凍結乾燥腱よりリモデリングが早期におこり,その後は24週以上を経て新鮮凍結保存腱と同様に移植腱が再構築過程を経て組織学的,生化学的に成熟し,力学的にも強度が改善する.本研究より,同種腱の移植材料をもちいる靭帯再建手術において,術後比較的早期に移植腱への過剰なストレスをかけないようにリハビリテーションをおこなうことにより,放射線滅菌を行った同種移植材料を再建材料として安全に用いうることができると考えられた. 2.ヒト膝関節での生体力学的解析 膝関節の運動を正確に再現させうるロボット工学を利用した6自由度関節シミュレーターを用いて,再建靭帯にかかる張力を計測した.膝関節前十字靭帯を2重束で再建することにより,本来の各線維束にかかる張力を同様の分配をもって再建靭帯に著力がかかることが示された.この方法より,移植腱に過剰なストレスをかけない手術術式が明らかになった.
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