研究概要 |
昨年度までの研究でノシセプチンがラットの遊離脊髄半切標本で後根からの連続した電気刺激によって誘発されるwind-up現象を抑制すること、この抑制は古典的オピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンでは拮抗されないことを報告したが、今年度はさらに研究を発展させて脊髄でのアセチルコリン受容体との相互作用の有無について研究を進めるとともにラット遊離延髄/脊髄標本を用いて延髄呼吸中枢へのノシセプチンの作用を解明することを研究目標とした。すなわち、ラット遊離延髄/脊髄標本を作成して人工脳脊髄液(27.5℃、pH7.4)で標本を潅流し、ノシセプチン(0nM,10nM,30nM,100nM,1μM)を潅流液に加え投与した。各標本においては単一濃度のノシセプチンで1回だけ潅流された後、第4頚神経前根から測定される電位を呼吸活動電位として記録した。結果、ノシセプチンは濃度依存性に、呼吸回数を減少させた。このノシセプチンの呼吸回数減少作用は、オピオイド受容体拮抗薬ナロキソンで拮抗されなかった。以上のことからノシセプチン受容体は中枢神経系の多様な部位で古典的サブ受容体と異なる受容体を通じて生理学的作用を持つことが示唆された。一方、アセチルコリン受容体作動薬であるカルバコールはラット遊離脊髄標本において後根からの電気刺激によって誘発される持続性前根電位を抑制するが、この抑制はムスカリン性受容体拮抗薬であるアトロピンによって拮抗された。また同様にカルバコールによって抑制される運動性の単シナプス反射電位はイダゾキサンやナロキソンで拮抗されずそれらの受容体との関連は示されなかった。
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