敗血症に見られる心筋β受容体を介した陽性変力作用減弱機構の解明を家兎を使用して検討した。Lipopolysaccharide(LPS)100μg/kgを投与してβ受容体刺激薬であるisoproterenolによる敗血症家兎乳頭筋心収縮力濃度反応曲線を得た。対照群には溶媒のみを投与した。乳頭筋標本の基礎収縮力に対照群と敗血症群の間で差を認めなかったが、LPS投与3時間後に敗血症群反応曲線が右方移動し、さらに6時間後にはその最大反応も対照群に比較して有意に低下することを確認した。この陽性変力作用減弱機序の解明のためにNitricoxide(N0)合成酵素阻害薬であるNG-nitro-L-arginine(L-NNA)前処置による濃度反応曲線の変化を検討したが両群間に差を認めなかった。受容体結合飽和実験により求めたβ受容体数および親和性も両群間で差を認めなかった。以上より敗血症では早期よりβ受容体を介した陽性変力作用が低下しており、その機序としてβ受容体数の変化、NOの関与は否定的であり、受容体とその情報伝達系の連関状態が障害されている可能性が強く示唆された。この結果に基づきG蛋白質の変化、アデニレートシクラーゼ活性の変化に関して検討中である。
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