研究概要 |
敗血症性ショックにおけるβ受容体を介した陽性変力作用減弱が、同受容体細胞内情報伝達系のどの部位においていかなる機序により生じているかを薬理学的および分子生物学的手法を用いることにより体系的に解明する事を目的とした。New Zealand白色家兎にエンドトキシンを静注し敗血症性ショックを作成し、静注後3および6時間後の摘出右室乳頭筋を使用した。薬物はIsoproterenol(Isp),colforsin daropate(CD),dBcAMP、NOS合成阻害薬(N^G-nitro-L-argi nin:L-NNA)を使用した。薬物刺激による陽性変力作用、Adnylate cyclase(AC)活性測定、β受容体結合飽和実験、Gs,Gi蛋白のWestern,Northern blot解析を施行した。これらの検討により敗血症性ショックにおいて、L-NNA前処置の影響を受けないIspによる陽性変力作用・AC活性の低下、CD,dBcAMP陽性変力作用・AC活性の保持、β受容体数・親和性の保持、Gi蛋白に著変を認めないGs蛋白量およびmRNAの減少を認めた。この結果は敗血症性ショックにおいてはNOの直接作用によらないβ受容体を介した陽性変力作用の低下があり、この機序としてGs蛋白質の転写段階からの減少によることが証明された。臨床的には、抗ショック療法としてAC刺激薬、PDE阻害薬、Ca^<2+>感受性増強薬等の有効性が示唆された。今後の研究の展望として、敗血症性ショックにおけるこのβ受容体細胞内情報伝達系の変化を惹起する、NO以外の物質の同定を行う必要があると考えられた。
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