研究概要 |
33度前後の軽度低体温の脳虚血に対する脳保護効果は、現在内外で大きく注目されている。しかし、保護効果の機序については依然確定していない。一方、昨今、脳虚血による細胞死はネクローシス以外に、アポトーシスの形態をとることが報告されている。申請者らは「軽度低体温が何らかの機序によりアポトーシスを抑制し、その結果脳虚血に対する保護効果を発揮する」という仮説を立てた。そこで神経系細胞(PC12細胞)を使い血清除去によりアポトーシスを誘導し、低体温の影響を検討するとともに、その機序を検討した。 37,35,33,31,29度の環境下で培養し、LDH活性による細胞傷害率、flow cytometryでDNA含量を測定するすることによるアポトーシス細胞の割合を測定した。その結果、低体温になる程細胞傷害率、アポトーシスの割合は低下した。 その機序として以下の2つを測定した。 (1) 活性酸素産生の測定 細胞内活性酸素の特異的蛍光指示薬であるC-DCDHF-DAを細胞に添加し、細胞内活性酸素量をフローサイトメトリーにより測定した。アポトーシス誘導により細胞内活性酸素量は約2倍となったが低体温により抑制されなかった。 (2) カスペース3活性の測定 特異的合成ペプチド蛍光基質の切断を蛍光により測定し、カスペース3活性を測定した。アポトーシス誘導によりカスペース3活性は増加したが低体温により抑制されなかった。 以上より神経系細胞における低体温のアポトーシス抑制機序は、活性酸素産生やカスペース活性抑制とは別の機序である事が推察された。
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