研究概要 |
リポポリサッカライド(LPS)やサイトカインにより、平滑筋細胞やマクロファージ内にはinducible nitric oxide synthase (iNOS)が誘導され、それにより産生される過剰なNOは、エンドトキシンショック時の血圧低下の一因と考えられている。前年度の本研究においては、吸入麻酔薬のイソフルランは臨床使用濃度でLPS刺激によるNO産生を抑制することをマウス腹腔マクロファージを用いて明かにした。今年度は更に細胞内iNOS蛋白量を検出することにより、イソフルランによるNO産性抑制が蛋白レベルなのかどうかについて検討した。【方法】チオグリコレート培地をマウス(C3H/He,♀6W)の腹腔内に2ml投与し、4日めに腹腔内細胞を採取した。これを1×10^6個の濃度に調整後、直径6cmのデッシュに分注し2時間CO2インキュベーターで培養し,非付着細胞を除去後マクロファージを得た。このデッシュ内にLPS(1μg/ml)を添加あるいは非添加した培地を加え、内部のガス濃度をCO_25%およびイソフルラン0MAC、1または3MACに調整したボックス内で37℃、24時間培養した。培養液中のNOは、NO Analyzer (SIEVERS)にてNO_2^-として測定した。また、細胞内に誘導されたiNOS蛋白は培養液除去後細胞をかきとり、2%SDS含有Tris Bufferにより得られた可溶分画をSDS-PAGEした後、抗iNOS抗体を用いたウエスタンブロッティングにより検出した。各群のiNOS蛋白量の比較はNIH Imageを用いて0MAC群を100%として行った。【結果】LPSを添加した培養液10μl中のNO_2^-量は、0MACイソフルラン群では465.5±64.0(平均±標準偏差)pmol、1MACおよび3MACイソフルラン群では459.2±72.5pmolおよび158.4±28.8pmolで、3MAC群で有意(p<0.001)に産生が抑制された。一方、iNOS蛋白の発現は1MACおよび3MAC群で113%および30%だった。【結論】今回の結果からイソフルランによるLPS刺激下でのマウス腹腔マクロファージからのNO産性抑制は、一部iNOS蛋白誘導抑制によることが判明した。
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