研究概要 |
リポポリサッカライド(LPS)により、マクロファージ内には一酸化窒素(NO)合成酵素の一つであるinducible nitric oxide synthase(iNOS)が誘導される。我々はマウス腹腔マクロファージを用いた平成11年度および12年度の本研究において、吸入麻酔薬のイソフルランおよびセボフルランが3MAC濃度でiNOS蛋白誘導を抑制することを明かにした。iNOS蛋白誘導にいたる細胞内シグナル伝達経路のひとつとしてptotein kinase Cが抑制因子として作用することが知られていることから、今年度においてはイソフルランおよびセボフルランがPKC活性におよぼす影響について検討した。【方法】チオグリコレート培地をマウス(C3H/He,♀6W)の腹腔内に2ml投与し、4日めに腹腔内細胞を採取した。これを1×10^6個の濃度に調整後、直径6cmのデッシュに分注し2時間CO2インキュベーターで培養し,非付着細胞を除去後マクロファージを得た。このデッシュ内にLPS(10μg/ml)を添加した培地を加え、内部のガス濃度をCO_25%およびイソフルランあるいはセボフルランOMACまたは3MACに調整したボックス内で37℃、2時間培養した。培養液上清除去後、細胞を0.5% Triton X含有50mM Tris Buffeで細胞を溶解させ100,000g、30分遠心分離後の上清についてPKC活性を測定した。PKC活性の測定にはPKC Assay System^<TM>(Amersham Pharmacia Biotech)と^<32>PATPを用い、OMAC群のPKC活性を100%として各吸入麻酔薬3MAC群と比較検討した。【結果】OMAC群を100%とした場合、イソフルラン3MAC群およびセボフルラン3MAC群のPKC活性はおのおの160.5±14.8(n=3,平均±標準偏差)、135.0±7.1%で、両群において有意にPKC活性が上昇した(p<0.05)。【結論】今回の結果から、セボフルランおよびイソフルランは3MAC濃度でLPS刺激によるPKC活性を増強させるることが判明した。
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