(1) ウサギ心室筋多細胞標本での実験;細胞膜KATPチャネルはATP以外にも、ADP、アデノシン、pH、Mg2+、Na+、Ca2+やPKCといった種々の生理活性物質、細胞内情報伝達物質によって制御されている。このため単離心室筋細胞にパッチクランプ法を適用した実験では安定した結果が得られないことが判明したため、より生理状態に近い心室筋および心房筋多細胞標本を使って麻酔薬の影響を調べることにした。膜電位はガラス微小電極で記録し、膜電位固定実験は二重微小電極法を応用した。その結果DMSOに溶解したプロポフォールは活動電位持続時間および自動能に濃度依存性に影響を与えることがわかった。この効果は他のイオンチャネルの影響も受けている可能性があるため、現在各種拮抗薬および5HD、HMR1098、Diazoxide、Glibenclamide、SPT、Chelerythrine等の阻害薬を使用することによって、虚血プレコンディショニングのエンドエフェクター(KATPチャネル)への麻酔薬作用を調べているところである。 (2) ミトコンドリアKATPチャネルでの実験;当初、ミトコンドリアKATPチャネル単独のgiant mitoplastsを作成し、これにパッチクランプ法を適用して電気生理学的実験を行う予定であった。しかしgiant mitoplastsの作成がうまくいかず、予定が大幅に遅れた。そこで現在生化学的方法でのアプローチが可能かどうか検討している。
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