本年度はミダゾラム、フェンタニルによる鎮静ラットの静的脳自動調節能に及ぼす全身低体温の影響について検討した. 方法:Spraugue-Dawley系ラット12匹を用いて、気管切開後、人工呼吸器にて調節呼吸(空気・酸素の混合ガスでFIO2=50%)とし、動脈圧測定用に左大腿動脈、輸液・脱血・薬物投与用に右大腿静脈にそれぞれカテーテルを挿入、次に、局所脳血流量の測定用に右頭頂に小孔を開け、レーザー血流量計のプローベを硬膜に密着固定した.体温は温度プローベを直腸および側頭筋に刺入して測定した.ミダゾラム(0.2mg/kg/hr)、フェンタニル(20μg/kg/hr)、ベクロニュウム(0.1mg/kg/hr)を持続投与し、動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)=37〜42mmHgに維持した.次に、アルコールの全身塗布にて直腸温を32〜34℃に低下させ、寒冷水をマット内に灌流して低体温を維持させた群(低体温群:6匹)、と直腸温を36〜37℃に維持した群(常温群:6匹)について、フェニレフリン投与および脱血により平均血圧(MAP)を変化させ、MAP=40、60、80、100、120、140、160mmHgにおける脳局所血流量を測定した.PaCO2は温度補正を行わず37℃で測定した.それぞれのMAPにおける局所脳血流量をMAP=100mmHg時の%で表示して(表1)、常温群と低体温群で繰り返しのある分散分析法にて比較した. 結果:直腸温および脳温は低体温群では33.7±0.5℃(平均±標準偏差)、34.0±0.4℃、常温群では36.6±0.5℃、36.9±1.1℃に維持され、いずれも常温と低体温群では有意な変化であった(P<0.01).局所脳血流量の変化には常温と低体温群に有意な差を認めなかった(P=0.85). 結論:低体温(33〜34℃)は脳自動調節能を抑制する傾向を認めたが、有意な変化ではなかった. 【table】 MAP=100mmHgの局所脳血流を100%として表示(平均±標準偏差) 今後の展開:低体温で脳自動調節能が抑制される傾向を認めた為、さらに症例を増やして検討を加える予定である.
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