本年度は5分間の両側頸動脈結紮による不完全脳虚血負荷後モデルを作成、このモデルにおける軽度脳低体温療法中の静的脳自動調節能について検討した。 方法:ラット(Spraugue-Dawley系)10匹を用いて、気管切開施行後、人工呼吸器にて調節呼吸とした。平均血圧(MAP)測定用に左大腿動脈、輸液、脱血、薬物投与用に右大腿静脈にそれぞれカテーテルを挿入、さらに、脳虚血導入の為に、左右の総頚動脈を露出・剥離して、一時的に結紮出来るように2-0の絹糸を総頸動脈に回した。次に、右頭頂に小孔を開け、レーザー血流量計のプローベを硬膜に密着固定して局所脳血流量を測定、側頭筋に温度プローベを刺入して脳温を測定した。 (1)不完全脳虚血モデルにおける常温下の脳自動調節能の評価 5分間頸動脈結紮、解除30分後、PaCO2=40mmHgに維持して、フェニレフリン投与および脱血によりMAPを変化させ、MAP=40、50、60、80、100、120、140、150、160mmHgにおける脳局所血流量を測定した。 (2)不完全脳虚血モデルにおける低体温下の脳自動調節能の評価 同様に、頸動脈結紮解除後、直ちに全身クーリング開始脳温を34℃に維持、頸動脈結紮解除から30分後、(1)と同様に脳局所血流量を測定した。 結果:不完全脳虚血負荷後ラットを(1)および(2)各5匹ずつ作成したが、血圧変動に伴い実験(1)で1例、実験(2)例を失った。表に常温群(non-hypothermic group)と低体温群(hypothermic group)の局所脳血流量の変化を示した。いずれの群においても脳自動調節能の抑制が示唆された。 結論:例数が少なく統計学的処理は不可であったが、不完全脳虚血負荷後ラットでは静的脳自動調節能は抑制、このラットに脳低体温療法を導入しても、静的脳自動調節能は変化しない(更なる抑制、改善は認めない)ことが示唆された。 【table】
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