研究方法 実験モデル:Spraugue-Dawley系成熟ラットを用いて、気管切開後、人工呼吸器にて調節呼吸を施行(FIO_2=50%)、平均血圧測定(MAP)用に左大腿動脈、輸液、脱血、薬物投与用に右大腿静脈にカテーテルを挿入、次に、右頭頂に小孔を開け、レーザー血流量計のプローベを硬膜に密着固定して局所脳血流量を測定、脳温は側頭筋に温度プローベを刺入して測定した。脳オートレギュレーション(以下CAR)はフェニレフリン投与および脱血によりMAPを変化させ、MAP=40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160mmHgにおける脳局所血流量を測定し、MAP=100mmHg時の%変化で評価した。まず、CARに影響を与えると考えられる因子(麻酔・鎮静薬、PaCO_2)を同定、その後に、これらの因子による影響を最少とした状態で低体温のCARへの影響について検討を加えた。さらに、両側頸動脈5分間結紮・解除ラット(不完全脳虚血例)おいても検討を加えた。 (2)研究結果 イソフルレン麻酔ではCARは有意に抑制、ミダゾラム、フェンタニル鎮静では温存された。高炭酸ガス血症(PaCO2=55mmHg)ではCARは有意に抑制、一方、低炭酸ガス血症(PaCO2=25mmHg)では有意に亢進した。低体温(33〜34℃)ではCARは有意に抑制された。不完全脳虚血ラットでは、例数が少なく統計処理は出来なかったが、いずれの常温群、低体温群いずれににおいてもCARの抑制が示唆された。 (3)考察 以上から、CARは静脈麻酔薬と麻薬を用いた場合、動脈血炭酸ガス分圧(40mmHg)では抑制されないことが示された。この状況下の軽度低体温(33〜34℃)はそれ自体CARを抑制するものの、不完全脳虚血例ではすでにCARが抑制されており、不完全脳虚血症例に軽度低体温を導入しても、更にCARが抑制されないと考えられた。
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