研究概要 |
1.研究目的 血管内皮上の接着分子(E-セレクチン)は好中球・単球との接着の第一段階であるローリングに関与するとされる。本研究の目的は、E-セレクチン発現に対する麻酔薬の影響を機能的レベル、蛋白レベル及びmRNAレベルで明らかにすることである。 2.研究方法・研究成果 本年度は主に静脈麻酔薬プロポフォールについて検討した。正常ヒト臍帯静脈内皮細胞培養キットを使用し、5%CO_2,95%air,37℃で培養し,コンフルエントとなったものを用いた。プロポフォール(0,0.01,0.1,1,10,100μg/ml)を含む培地で2時間pre-incubation後、更にIL-1(5U/ml)にて4時間刺激し、培地上清を検体として回収した。可溶性E-セレクチンの定量はELISA法により測定した。また同様の実験系で細胞を可溶化し回収しNorthern blottingによりE-セレクチンmRNA量を定量し解析した。可溶性E-セレクチン濃度はIL-1刺激により有意に増加したが、プロポフォールの前処置はIL-1による刺激効果に対して有意な変化はなかた。IL-1非刺激下でも、プロポフォールは有意な変化を示さなかった。E-セレクチンmRNAはIL-1刺激により有意に増加し、プロポフォールの前処置はその刺激効果に対して有意な変化はなかった。ケタミンの結果と合わせると、プロポフォールはE-セレクチン発現にほとんど影響はないが、ケタミンには接着分子E-セレクチンの産生抑制作用があり、SIRS進展に対する予防的効果がある可能性が示唆された。 3.今後の展開 現在吸入麻酔薬イソフルランとセボフルランについて、ずり応力負荷装置により30dyn/cm^2のずり応力を負荷した培養細胞にて上記と同様の実験を行い検討中である。更に、同様の流れのある条件下でadhesion assayにより機能的解析を進める予定である。
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