研究概要 |
近年,低体温は組織の酸素消費量を減少させ,代謝を抑制することによって,虚血に対する臓器の抵抗力を増大させ,頭部の重傷疾患患者の予後を改善する可能性が注目されている。しかし,従来の研究では正常時における脳血管作動薬や麻酔薬の脳循環に与える影響は,詳細に検討されているが,低体温時の脳血管の反応性は充分には検討されていない。そこで,下記の研究を試みた。 検討題目:α2アゴニストの直接の脳血管に対する反応性の検討-通常体温と低体温の比較 雑種成犬をを対象として,静脈路を確保の後,ペントバルビタールで麻酔を維持し,頭窓(closed cranial window)を作製することによって脳軟膜血管を直接観察した。通常体温(36〜37度)においてはクロニジン,デキサメデトミジンともに脳軟膜血管を収縮させるが,高濃度においては収縮の程度が減弱し,他の拮抗的な作用機序が発現することがわかった。ATP-sensitive K^+ channel blockerであるglibenclamideの投与によってその減弱作用は拮抗されることから,α2アゴニストの高濃度の投与においては,ATP-sensitive K^+ channelが活性化されて拮抗作用を呈することが判明した。この後,低体温(34度)での反応性を観察する予定であったが,低体温によって出血傾向が出現し,頭窓(closed cranial window)の維持が困難となったため,低体温モデルが完成せず,止血操作を含めて頭窓(closed cranial window)作成に置いて再検討を要し,今年度は通常体温における検討のみが可能であった。止血操作等を再検討し,実験動物の変更も今後考慮にいれる必要があることが認識された。
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