急性肺傷害からの回復・線維化の防止・治癒には肺胞II型上皮細胞の増殖と脱落防止が必須事項であると考えられている。平成11年度では分離培養肺胞II型上皮細胞を用いてロリプラムが肺胞II型上皮細胞の増殖を亢進することを示した。平成12年度ではロリプラムと麻酔鎮静薬の肺胞II型上皮細胞増殖・アポトーシスに対する効果を検討し、さらに急性肺傷害動物モデルに投与しその軽減効果について検討した。最初にエンドトキシンによる肺胞II型上皮細胞のアポトーシスに対するロリプラム及びプロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンの影響を検討し、次にロリプラム・プロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンのエンドトキシン肺傷害に対する軽減効果を検討した。ロリプラムは増殖因子の存在下でも非存在下でも肺胞II型上皮細胞の増殖を亢進した。プロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンは増殖効果を示さなかった。ロリプラムの腹腔投与により肺胞II型上皮細胞(SP-C蛋白産生細胞)におけるBrdUの取り込みが増加していた。ロリプラム・プロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンは培養線維芽細胞の増殖に影響を与えなかった。ロリプラムは分離肺胞II型上皮細胞のアポプロテインの発現(SP-BmRNA)を亢進した。エンドトキシンによる肺胞II型上皮細胞のアポトーシスをロリプラムとプロポフォールが抑制した。in vivo実験としてロリプラム及びプロボフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンの前投与はすべて組織学的及び生化学的に肺傷害を軽減した。
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