急性肺傷害の過修復期を乗り越えこれを治癒させるためには脱落した肺胞II型上皮細胞の増殖が必須であると考えられる。本研究ではPDE-IV阻害薬のロリプラムと麻酔鎮静薬の肺胞II型上皮細胞増殖・アポトーシスに対する効果を検討した。まずin vitro実験として分離培養ラット肺胞II型上皮細胞を用いてロリプラム及びプロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンの肺胞II型上皮細胞増殖に対する影響をMTT改良法及びBrdU取り込み法にてKGFまたはHGFの存在下・非存在下で検討した。またin vivo実験としてC57BLマウスにロリプラムを投与し肺胞II型上皮細胞の増殖効果を検討した。次に培養線維芽細胞(JTC-19)に対するロリプラムの影響を、分離肺胞II型上皮細胞を用いてアポプロテイン(SP-B)産生に対するロリプラムの影響を検討した。in vivo実験としてLPSによる肺胞II型上皮細胞のアポトーシスに対するロリプラム及びプロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンの影響を、ロリプラムなどのLPSによる肺傷害に対する軽減効果を検討した。ロリプラムは増殖因子の存在下でも非存在下でも肺胞II型上皮細胞の増殖を冗進した。プロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンは増殖効果を示さなかった。ロリプラムの腹腔投与により肺胞II型上皮細胞(SP-C蛋白産生細胞)におけるBrdUの取り込みが増加していた。ロリプラム・プロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンは培養線維芽細胞の増殖に影響を与えなかった。ロリプラムは分離肺胞II型上皮細胞のSP-BmRNAの発現を亢進した。LPSによる肺胞II型上皮細胞のアポトーシスをロリプラムとプロポフォールが抑制した。ロリプラム及びプロポフォール・リドカイン・ミダゾラム・ケタミンの前投与はすべて組織学的及び生化学的に肺傷害を軽減した。
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