研究概要 |
平成11年度において,生体蛍光顕微鏡法によるネコ脳軟膜微小循環観察で,ハロセン吸入終了後の血管拡張に,血流依存のレオロジー因子(特に管壁ずり速度)の関与が考えられた.一方,cell-free layerは血管壁内側(内膜)面に形成されるため,生体におけるその動的変化は血流依存の血管拡張に影響を与える可能性がある.ハロセン麻酔下のネコ脳軟膜微小循環において,細動静脈血管拡張とcell-free layerの変化を分析した.[方法]ネコをクロラロースで麻酔導入,頭蓋窓など外科処置約1時間後,1%ハロセンを吸入,30分間持続した.血圧(P)は大腿動脈にカテーテルを挿入し測定した.FITC-蛍光標識赤血球で赤血球コラムを及びRITC-蛍光標識デキストランで血管内腔像を得るため,蛍光顕微鏡下で脳微小循環を可視化した。この像を高感度ビデオに記録した.ビデオ画像から,14本の微小血管について,血管内径(D)及び赤血球コラム径(d)を同部位で5回ずつ計測した.D-d/2をそのときのcell-free layerの厚さ(T)とした.また同時点の管壁ずり速度(pSR)を赤血球速度(V)及びDより計算した.[結果及び考察]ハロセン吸入によりP及びVは低下,D及びTは増加した.(1)Tは,pSRの減少と共に増加した.(arteriole;R=0.80,venule;R=0.65)(2)Vの変化は,pSRの変化と正相関した.(3)pSRの減少率は,血管拡張の程度と良い相関を示した.(arteriole;R=0.77,venule;R=0.76)ハロセン吸入中の微小血管拡張には血流依存のレオロジー因子の関与よりも,むしろ血圧低下に対する筋原性機序及びハロセンによる直接反応によるものが考えられた.
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