研究概要 |
我々はラットのCLPモデルを用いてATIIIの敗血症の生存率に対する効果を検討すると共に、そのモデルでの血清中のアラキドン酸代謝産物及びサイトカインを経時的に測定した。その結果、ATIIIがCLPによるラットの敗血症性ショックの生存率改善に対し有効であり、同時に血中の炎症性アラキドン酸代謝産物及びサイトカイン産生の抑制が生じることを報告した。今回は、そのATIIIのメディエータ産生抑制の機序が、抗凝固作用による間接的なものか、細胞に対する直接作用かを検討するために、ラットの腹腔内マクロファージを用いて各種刺激によるメディエータ産生に対するATIIIの効果を検討した。(方法)動物はWister雄性ラット(200-280g)を用いる。エーテル麻酔下に開腹し、型通りマクロファージを採取した。細胞を刺激するものとして、エンドトキシン(LPS)1,10,50(μg/ml)及びheat-killed group B streptococcus(GBS)1,10,50(μg/ml)を用い、その各々にATIIIを0,10,50(U/ml)の濃度になるように調製して添加し、12時間培養した後、その上清を採取して後の検討に用いた。今回はIL-2とIL-6の測定を行なった。(結果)LPS及びGBSの刺激によってコントロール群に比較して、IL-6は有意に賦活された。その賦活はATIIIの存在によって有意に減少した。一方、IL-2も同様に刺激によって賦活され、ATIIIによって減少傾向を示した。(結論)ATIIIが盲腸結紮モデルによって作成されたラットの敗血症性ショックの生存率改善に対し有効であり、その機序に血中の炎症性アラキドン酸代謝産物及びサイトカイン産生の直接的な抑制が関与している可能性が示唆された。
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