研究概要 |
ラット局所脳虚血モデルを用い,脳低温処置の脳保護効果について検討した。右外頸動脈よりナイロン塞栓糸を挿入し,右中大脳動脈の血流を1時間あるいは2時間遮断した。血流再開後,虚血負荷27時間後まで約33℃の脳低温処置を低温開始時期を変えて行った。動物の脳温は左線条体内にトランスミッターを埋め込み,テレメントリーシステムにより測定した。1時間の復温の後,脳冠状切片を作製,TTC染色で梗塞領域を計測し,脳低温処置群と対照群の梗塞体積を比較した。その結果,1時間虚血モデルでは虚血再灌流6時間後まで,2時間虚血モデルでは虚血再灌流1時間後までに脳低温処置を開始すると,有意な梗塞体積の縮小効果が認められた。しかし,この脳保護効果を脳の領域別に分析してみると,大脳皮質の脳保護効果が顕著であったが,低温開始時期が遅れると線条体領域では脳保護効果がほとんど認められなかった。 スナネズミの一過性前脳虚血モデルを用い,蛍光色素エバンスブルーの漏れを経時的に追跡し,虚血再灌流後の血液脳関門の破綻の程度を分析した。単純虚血群では虚血4日後をピークに,前頭葉,頭頂葉,海馬CA1などに強い色素の漏れが観察された。虚血再灌流1時間後から24時間の低温処置を施すと,色素の漏れは脳全領域で顕著に減少し,低温処置に強い血液脳関門の破綻抑制作用があることが認められた。また,スナネズミの一過性前脳虚血モデルで緑茶の成分であるテアニンにある程度の脳保護効果が有ることが判明し,軽微低脳温処置との併用効果について今後検討する予定である。
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