吸入麻酔薬および静脈麻酔薬が末梢血単核球のmRNA発現に及ぼす影響に関して研究を行った。 1.吸入麻酔薬が末梢血単核球のmRNA発現に及ぼす影響 (1)手術患者を対象とし、手術開始1時間後の末梢血単核球のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、TNF-α)のmRNA発現量を吸入麻酔薬の濃度を変化させながら定量分析した。吸入麻酔薬はイソフルレンとセボフルレンを使用し比較検討した。その結果、ともにmRNAの発現量は手術侵襲により増加するものの、吸入麻酔薬の濃度が上がるにつれ発現量は抑えられる傾向が認められた。 (2)吸入麻酔薬を末梢血単核球を浮遊させた溶液に溶解させ、末梢血単核球のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、TNF-α)のmRNAを定量分析した。吸入麻酔薬はイソフルレンとセボフルレンを使用し比較検討した。その結果、ともにmRNAの発現量は濃度が上がるにつれ発現量は抑えられる傾向が認められたが、イソフルレンの方が抑制の程度は強かった。 2.静脈麻酔薬が末梢血単核球のmRNA発現に及ぼす影響に関する研究 プロポフォール、ミダゾラム、ケタミンを溶解させた溶液中に末梢血単核球を浮遊させ、それぞれの溶液中の濃度と末梢血単核球のmRNA発現量を検討した。その結果、プロポフォール、ミダゾラムは濃度が高くなるにつれmRNA発現量は減少する傾向にあったが有意差はみられなかった。ケタミンは逆に濃度が高くなるにつれmRNA発現量は増加する傾向にあった。同様に有意差はみられなかった。 3.今後の研究の展開に関する計画 本研究により吸入麻酔薬や静脈麻酔薬が末梢血単核球のサイトカインmRNA発現量に抑制的に働くことが示唆された。当初、予定していた低血圧や輸血が免疫系に及ぼす影響に関しては現在、研究中であり本研究の方法で解析できるものと思われる。
|