虚血-再灌流により生じる遺伝子反応も転写調節因子により調節されているが、機序は明らかではない。我々は、腎虚血-再灌流が転写調節因子のうちATF-2およびc-JunとDNAの結合を増強すること、およびラットの腎臓の虚血再灌流モデルにて40分の虚血後20分の再灌流によってSAPK/JNKキナーゼ活性が上昇することを示した。また、フードインキュベータによる加温による体温上昇で、腎臓および心臓のp38MAPキナーゼ活性が上昇することをラットを用いて確認した。これは、直腸温にて測定した体温で、摂氏41度において、37度と比較して腎臓で約2倍、心臓で約5倍であった。また、この活性化の上昇を抗酸化剤であるN-acetyl-L-cysteineが抑制することを示し、p38MAPキナーゼの活性化に酸化ストレスが関与することが示され、高体温による臓器障害防止への抗酸化剤使用の可能性を示した。以上の結果を、「N-acetyl-L-cysteine inhibits activitation of p38 MAP kinase in heat stressed heart」 として、1999年、米国麻酔学会年次総会(ダラス、米国)にて、また「N-acetyl-L-cysteine inhibits activitation of p38 MAP kinase in heat stressed kidney」 として、2000年、世界麻酔研究会(ハワイ、米国)および2000年、日米麻酔会議(ハワイ、米国)にて報告を行った。今後、腎虚血-再灌流時のキナーゼ活性の測定やキナーゼ活性がDNAと転写調節因子の結合におよぼす影響ついて研究し、虚血-再灌流による細胞障害の機序をさらに明らかにする予定である。
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