オレイン酸による急性肺傷害モデルを用いて、体外式肺補助(Extracorporeal lung assit:ECLA)下の肺内液体充填法の効果を検討した。雑種成犬を麻酔後、気管内挿管し人工換気を行った。オレイン酸0.2ml/kgを右房内に投与し、FiO2 1.0でPaO_2が100mmHg以下に低下したら急性肺傷害の発症とみなした。右総頚静脈より落差で脱血し、人工肺でガス交換後に右総頚動脈へ送血するV-AバイパスECLAを開始し、37℃に加温した乳酸加リンゲル液を気管内に注入して肺を完全に充填した。充填後4時間で排液して通常の人工呼吸を開始し、生体肺機能の回復をみた。 オレイン酸投与後、およそ1時間で急性肺傷害が発症した。4時間の肺内液体充填後に、赤褐色の浸出液を混じた排液を回収した。排液直後より陽圧換気で肺は膨らんだ。液体充填前にはかなりの気道内浸出液が認められたが、排液後には肺からの浸出液は著明に減少した。徐々に体外循環血流量を減少していったが、半数のイヌがECLAを離脱して通常の人工呼吸のみでガス交換を維持できるようになった。剖検所見では、全身の浮腫はあまり強くなく、肺は下側1/3は鬱血、無気肺、出血がみられたが、上側2/3は比較的含気もありよく膨らんでいた。 このように、ECLA下肺内液体充填法は、肺傷害に対して治療効果をあげる可能性が示唆された。今後は持続血液濾過透析を併用してさらに治療効果の検討を行う予定である。
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