研究概要 |
本研究では、脊椎動物より中枢神経の構造が単純である淡水棲かたつむりLymnaea stagnalisの呼吸中枢を用い、そのメカニズムを解明することで,脊椎動物の呼吸のメカニズムや麻酔薬の作用機序の理解を深めることを目的とした。昨年は,中枢パターン発生器(central pattern generator:CPG)のなかの,RPeD1とVD4の神経細胞を用い,細胞体で形成されたシナプスを形成し,このシナプスに対するセボフルレンの抑制作用を調べた。昨年の実験に引き続き,セボフルランの作用機序を,カルシウムイオンとどのように関係しているのか調査した。 方法:清潔操作のもとで脳をLymnaeaより取り出す。抗生物質を含んだ生理食塩液によってこれらの脳を洗浄した後,適切な酵素処理を行う。酵素処理した脳から呼吸のCPGの中からRPeD1を同定する。そのニューロンをガラスピペットにて吸引分離し,接着物質にてコーティングされ、培養液に満たされた培養皿に置いた。RPeD1を細胞内記録しながら,標本に異なる濃度の吸入麻酔薬(セボフルラン1%,4%)をバブルした生理食塩液を還流させた。カルシウム濃度の測定は,Fura-2を用いた蛍光色素の2波長の吸光度の違いで測定した。 結果:RPeD1はセボフルラン1%では、活動電位の頻度が増加し、細胞内カルシウム濃度が増加した。セボフルラン4%では細胞内カルシウム濃度の変化は少なかった。セボフルランは、RPeD1の興奮性を変化させることで細胞内カルシウム濃度を上昇させることが考えられた。 昨年の結果とあわせて、これらのことは、研究結果報告書にまとめて提出予定である。 今回,購入した防振台とパーソナルコンピュータは,記録時の振動除去と記録の解析のために有効に用いられている。
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